一時の禁煙ブームの中、駅のプラットフォームや全席禁煙のエアラインなどが登場し、喫煙者の権利を主張されている方がいらっしゃいました。
初めに申し上げておきますが、私もかつて若かりし頃、喫煙者だったことが数年あります。喫煙者の心理は分かります。
私の両親は私が幼い頃から喫煙者でした。物心ついたときから
タバコにふれていましので、嫌煙するどころか、パッケージに入っている乾いたタバコの匂いを嗅ぐのが大好きでした。タバコの煙も(当時両親が吸うタバコの煙ですからたいした煙の量ではありませんでしたが)、大人の匂いみたいな感覚でさほど毛嫌いすることもなく、特別な興味もなく過ごしていた気がします。
私がタバコに手を出したのは、二十歳を過ぎてから。
面白くないことが続き、すさんだ気持ちを癒したくて、友達の勧めるタバコを吸ってみたのがきっかけでした。
でも、体質に合わなかったようで、頭痛や吐き気が続くようになり、禁煙する決意をして以来一度もタバコに手を出したことはありません。
丁度同じ頃、父が喫煙による肺がんで他界したことも、私の決意を更に深めた原因でもあります。
医者は父の肺がんの原因は100%喫煙によるものと断言していました。そして同じ体質を受け継いでいる私達兄弟に、十分注意をして検査は毎年受けるように、忠告してくださいました。
父が62歳の若さで肺がんにより他界したこともショックでしたが、同じガン病棟にまだ4・5歳の子どもを持つ40代位の父親がやはり肺がんで治療を受けていたこともショックでした。その方がどの程度のガンを患っていらしたのか分かりませんが、見ていて軽症ではないのは分かります。
「
タバコさえなければ、みんなこんな苦しみを味わうことがないんだ。」
「病んでからでは遅い!」
そんな強い思いが心湧き上がるのを感じていました。
それ以後、煙害について周りから嫌われながらも自分の意見を主張するようになりました。
とある外資系の広告代理店に勤務していたとき、100名ちかくの従業員中禁煙者はたったの5名、というたばこを吸わない者にとって驚異的な職場環境だったことがあります。2つの会社が統合して一気に社員数が増えたために、オフィス環境を整える余裕がなく、とにかく広い空間に机を並べて仕事ができる環境を整えたといった状態でした。
95名の喫煙者の社員が朝出社すると、一斉に席でタバコに火をつけます。すると広い空間のオフィスでも瞬く間に辺りは煙でかすみ、目にしみるほど煙い状態になります。一日中タバコに煙にまみれ、いわば燻製状態で一日を終えます。帰宅すると自分の髪の毛、衣類は勿論、私の持ち物のバック、書類、全てにタバコに匂いが染み付いて、その匂いで気持ち悪くなるほど、自分の身体に悪影響を及ぼしている毎日を我慢しました。
しかし、遂に我慢もつきて95名を敵に回して、禁煙者の権利を主張し、
「座席での喫煙禁止。その代わりに社内に2箇所の喫煙コーナーを設ける。」
との新たな規則を作っていただいたことがあります。
ただし、いきなり“喫煙ブースの設置”まではいかず、単に風上に当たる出入り口に大きな灰皿を置き喫煙コーナーにしたので、結局オフィスエリアに煙が送り込まれて、受動喫煙防止まではなりませんでした。
現在、レストランなどで同じような光景を目にすることが良くあります。
かつて日本に来訪したアメリカ人が、日本は先進国なのに、レストランなどの煙害に対する対策は遅れていると、指摘されたことがありました。
今ではかなり喫煙席が設けられているところが増えましたが、完全に区切られているわけではなく、意味を成さない禁煙席が多く見受けられます。
お酒も程が過ぎれば健康を害しますが、お酒を飲まない者が同席しても、絡まれない限り迷惑を被ることはありません。でも、タバコは吸わない者の健康も害されてしまいます。
「禁煙者の権利をもっと大切にしてほしい」
「タバコを吸わないものの健康を害さないように、お店作りに気を配ってほしい」
先日仕事場のちかくのドトールが全席喫煙席に変えられていました。
知らずに入った私達は、喫煙者に囲まれて驚異を感じながら急いで食事を済ませ、いそいそと出てきました。
世の中の全員が、喫煙者なわけはありません。
タバコを吸わない者を無視したお店の対応を、非常に残念に思います。
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