古い写真を見つけました。
実家の猫達の写真でした。
ミミは私が始めて飼った愛猫です。
家族は猫が大嫌いでした。特に祖母と父は猫を毛嫌いしていました。
なので、実家では代々犬を飼っていました。
父と祖母が他界した後、母は仕事場(神田)に突然現れたミミを気にするようになりました。
母が路地を歩くと、何処からともなくミミが現れ、お腹を出して寝転がり、母に甘えていたのだそうです。
ある日、神田のビルの谷間でミミは子どもを産みました。近所の猫好きなおばさん達が子猫を見に訪れても、ミミは怒ることなく子どもを抱かせていたそうです。
そんな中、神田に大雨が降りました。夜通しミミは鳴いていたと、近所のおばさんは言います。
翌日、母が心配して覗きに行くと、子猫の姿が見えません。どぶにはまって流されてしまってました。ミミは必死に子どもを捜します。
さらに翌日、母がミミの様子を見に行くと、なんと子どもが戻ってました。ミミはどぶに入り込み、柵に引っかかっていた子どもを全て救い出していたのでした。
その後、母を含むご近所の猫好きおばさん達は、子どもの貰い手を捜し、ミミの避妊手術の費用を出し合うことにしました。
処置をしてもらう獣医を捜す段階で、母達は壁にぶつかりました。
野良猫は病気を持っている可能性があるので、受け付けてもらえなかったのです。
仕方なく、母は自宅に連れ帰り、犬たちを診てもらっている行き着けの獣医さんに処置していただくことになりました。
暮れも押し迫ってのことでした。
退院後もまだお腹の傷は完治していません。
獣医さんは、外に放しても大丈夫とおっしゃいますが、暮れから正月にかけて、人気のなくなる街中にミミを放り出すとこがどうしてもできず、そのまま家で飼うことにしました。
当時、実家にはトイプードルとポメラニアンが居ました。
ミミは犬2匹と同居できるのだろうか?
入院中、出された食事を拒否していたくらいの頑なな野良猫さん。
はたして馴れてくれるのか。
始めて手にする猫。 どう飼ったらいいのだろうか?
な~んの心配もいりませんでした。
ミミは、日を追うごとになれてくれました。
何を教える必要もなく、用意したトイレを使い、私の部屋を縄張りにして、次第に自分のテリトリを広げていきました。
犬達と喧嘩をしたことも、一度もありませんでした。
ミミは私にべったり懐いてくれました。
私がお風呂に入ると、風呂場の引き戸を開けて入ってきます。
トイレにたつと、扉の前で待っています。
いつでもどこでも、私のあとを追ってきました。
外出から帰ると、ミミは私の足音を聞きつけて、2階の私の部屋から飛出し、必ず玄関で待っていてくれました。
夜は必ず私の肩越しに寝ます。
大きなミミが肩に乗ると重いのですが、ミミの温もりが疲れた身体を癒してくれていました。
そんなミミとの別れの日が来てしまいました。
私がこの家を出るときは、必ずミミも一緒と決めていたのですが、新居は「ペット禁止」のマンションでした。
ミミとの最後の晩、私はミミを抱きしめて泣きました。
ミミも何かを感じ取っていました。
私の涙を、そっと拭ってくれました。
「ゴメンねミミ。貴方を捨てるわけではないの。 しばらく別に暮らすことになるけれど、なるべく顔をみせにくるから、元気でいてね。 いつかまた一緒に暮らそうね。」
昨年末、私は引越しをすることになりました。
ミミを引き取ろうか、迷いました。
実家の中で新しい居場所を見つけたミミは、それなりに落ち着いています。
他の猫達と陽だまりの中でヌクヌクと過ごしているミミを、私の身勝手な思いで1人にしてしまっていいものだろうか?
はたして引き取ることがミミにとって幸せなのか?
実家に帰る度に、ミミを見つめて自問自答していました。
結局ミミとの生活を断念しました。
今の生活環境は、ミミにとって実家よりいい環境とは思えなかったからです。
私の決断が正しかったのか、今でも迷いはあります。
こうして写真を見ると、切なくて胸が痛みます。
やはりミミを連れてきた方がいいのか、気持ちがゆれます。
「ミミはどうしたい?」
私がわかる言葉で気持ちを表してくれたら、どんなに心が楽になることでしょうか。
ごめんね、ミミ!
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